小島三郎先生没後50年・財団創立20周年記念式典並びに
第48回小島三郎記念文化賞・第20回研究助成金贈呈式及び祝賀会
2012年度
小島三郎先生没後50年・財団創立20周年記念式典並びに第48回小島三郎記念文化賞・第20回研究助成金贈呈式が、去る10月21日(日)午前10時30分より東京會舘において開催されました。
小島三郎先生没後50年・財団創立20周年記念式典
はじめに、小島三郎先生没後50年・財団創立20周年記念式典が行われ、中谷理事長より開会の挨拶の後、「小島三郎先生を偲んで」と題して、当時国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)副所長の小島三郎先生との最初の出会いで激励してくださったこと(昭和23年)、小島三郎先生は永年のご趣味として若い頃、留学先のスウェーデンで覚えられたスキーを嗜まれ、国内のスキー大会では全日本スキー連盟の会長として三笠宮様のお伴をされて出席されていたことなどのお人柄がご紹介されました。 |
続いて、来賓挨拶として国立感染症研究所長の渡邉治雄先生より、小島三郎先生は若いころは財界での活躍の夢を抱いておられたこと、家庭の事情により医学の道を志したこと、そして小島三郎記念文化賞、小島三郎記念技術賞、福見秀雄賞が、創設されるまでの経緯についてお話があり、「小島先生が制圧に努力されたコレラ、赤痢のような伝染病は、現在我が国ではほとんど問題とされなくなったが、一方で、HIV、SARS、新型インフルエンザなどの新興感染症の病原性の解明や生体防御のメカニズム等の基礎的研究、あるいはワクチン等の予防法の開発、さらに安全で有効なワクチンを国民に提供するための品質管理に関する研究等が今まで以上に重要になってきている。優れた研究成果を称える小島三郎記念文化賞及びその関連の賞の社会的価値は大きくなるばかりで、今後の黒住財団のさらなる発展と社会的貢献を祈念する。」と祝辞を述べられました。 |
引き続き、早稲田大学名誉教授、吉村作治先生による「エジプト文明からみた地球環境」と題する特別講演が行われ、記念式典は滞りなく終了しました。 |
記念式典に引き続き、第48回小島三郎記念文化賞並びに第20回研究助成金の贈呈式が開催されました。
小島三郎記念文化賞の受賞者は、名古屋大学大学院医学系研究科 分子病原細菌学/耐性菌制御学分野 教授の荒川宜親氏。
受賞のテーマは「病原細菌が獲得した新規薬剤耐性機構(16SリボゾーマルRNAメチラーゼ)に関する体系的研究」で、永年、病原細菌の薬剤耐性に関する研究に尽力され、その一連の研究業績は世界的にも高く評価されています。
特に、プラスミド媒介性メタロ-β-ラクタマーゼIMP-1を世界で最初に発見され、さらにその産生菌の検出法(SMAディスク法)を開発されたのをはじめ、日本で臨床分離されたアミノグリコシド系薬高度耐性緑膿菌から16SリボゾーマルRNA(rRNA)をメチル化することによりアミノグリコシド系薬からリボゾームを保護する16SrRNAメチラーゼを世界で最初に発見される等、数々の学術的かつ医学的に重要な発見、開発をされ、病原微生物学、感染症学の発展に多大な貢献をされたことが受賞の対象になりました。
贈呈式は、当財団中谷林太郎理事長の開会の挨拶で始まり、続いて同理事長より小島三郎記念文化賞の選考経過が報告されました。
今回推薦された小島三郎記念文化賞候補の業績は全部で3件(微生物関連の業績が1件、ウイルスに関する業績が2件)で、何れも極めてレベルの高いものであり、厳正審査の結果、荒川宜親氏を受賞者に決定した旨の選考経過報告があり、同氏に賞状と記念トロフィー、副賞が贈呈されました。
また、荒川宜親氏を推薦された国立病院機構熊本医療センター 名誉院長の宮ア久義氏より推薦のお言葉をいただき、同氏の業績を紹介していただきました。
研究助成金は16名の先生方に贈呈されました。研究助成金の選考経過については、今回より選考委員長に就任された当財団宮地勇人理事より「本年度は、申請応募件数185件に対する選考委員会での審査・選考について、厳正審査の結果16名に研究助成金を贈呈する事に決定した。」旨の報告があり、中谷理事長より受贈者に研究助成金総額1,200万円(今回より200万円増額)が贈呈されました。
小島三郎記念文化賞受賞者
小島三郎記念文化賞を受賞された荒川宜親氏は「本日は、ご推薦いただいた宮ア久義名誉院長、それから黒住財団理事長の中谷林太郎先生並びに理事・監事、選考委員の先生方に厚く御礼申し上げる。
現在、名古屋大学と国立感染症研究所は耐性菌の研究では連携して新たに色々な研究を進めさせていただいている。また、WHOも2010年に各国の政府機関に薬剤耐性に対して対策を強化するようにとの提言を出している。
今後、私の研究テーマとして、これまで続けてきた薬剤耐性菌あるいはサーベイランスに関する研究を進めながら、今後は国際的にも今大きな問題となっている殺虫剤耐性、除草剤耐性の様な抗菌薬あるいは薬剤、化学物質抵抗性の生物に関する研究も幅広く展開していきたい。
もう一つの課題として、多剤耐性菌が沢山出てくる中でそれに対する新しい抗菌薬の開発に繋がるような基礎的な研究を推進していきたい。」と感謝の言葉と今後の抱負を述べられました。
研究助成金を受けられた先生方
また、研究助成金受贈者を代表して、岡山大学病院医療技術部(検査部門)副臨床検査技師長の渡部俊幸氏より「本日、研究助成金受贈者を代表してお礼の言葉を申し上げたい。私は臨床検査技師として24年間血液検査の場で血液細胞を見てきて、臨床検査の中で遺伝子検査の重要性について計り知れないものを感じている。そこで研究目標として院内での遺伝子検査システムの構築を挙げさせていただいた。これは、速やかに遺伝子異常を検査室レベルで検出・解析し、正確な診断・予後判定の要因を見つけ治療を決定する最も有用な情報を与えてくれると思う。今後とも、諸先生方のご指導ご鞭撻をよろしくお願いしたい。」と受賞の喜びと今後の抱負を述べられました。
贈呈式閉会にあたり、当財団黒住忠夫常務理事より「荒川宜親氏と奥様には心よりお慶び申し上げる。研究助成金受贈者にはこの研究助成金を有効に使っていただき先生方の研究がさらに進展されることを期待している。また財団の基本金がさらに充実して参ったので本年度より研究助成金の総額は200万円増額し1,200万円とした。当財団も医学並びに検査の発展に貢献すべく次の30年、50年に向けて継続は力なりを着実に実行して参りたい。今後とも温かいご支援をお寄せくださるようお願い申し上げる。」との挨拶があり、贈呈式は滞りなく終了しました。
次いで、記念祝賀会が午後1時から場所を移して開催されました。
当財団の佐々木正五理事より「財団創立20周年を迎えて」と題し、黒住財団ゆかりの小島三郎先生、財団初代理事長の福見秀雄先生、そして栄研化学の黒住剛初代社長の逸話を交えた楽しいお話があり「我々は、先人の温かい、進取の気持ちに心から深く感謝してご挨拶にかえたい。」と述べられました。
続いて、当財団の河合忠理事より、小島三郎記念会発足から小島・福見記念会を
経て、現在の公益財団法人黒住医学研究振興財団に至るまでの経緯についてのお話及びお祝いの言葉の後、乾杯のご発声で弦楽四重奏の奏でる調べをバックに宴が始まりました。今回は、過去に小島文化賞、小島技術賞および福見賞を受賞された先生方をはじめ医療関係の多数の先生方をご招待していることもあり、旧交を暖め談笑される光景がそこかしこで見られ、スクリーンに映し出された過去の贈呈式の映像を懐かしくご覧いただきながら賑々しく宴が進むうちに、第29回小島三郎記念文化賞受賞者でもある東海大学名誉教授の小澤敦先生による万歳三唱による中締めとなり、全ての行事が盛会裡に終了致しました。
なお、今回の記念式典および祝賀会の司会を担当していただきました、栄研化学マーケティング推進室の大森圭子氏並びに、お手伝いいただきました栄研化学社員の皆様に心から感謝申し上げます。
(事務局 佐藤 貴司)