小島三郎記念文化賞・研究助成金
2014年度
第50回小島三郎記念文化賞並びに第22回研究助成金の贈呈式が平成26年10月31日(金)午前11時より、東京會舘において開催されました。
小島三郎記念文化賞の受賞者は、世界保健機関(WHO)本部事務局長補で医学博士の中谷比呂樹氏。
受賞のテーマは「不健康と貧困の悪循環を断つための地球規模での公衆衛生学的アプローチ」で、永年、国内外の衛生行政に一貫して携わり、世界の公衆衛生に多大の貢献をされた業績が高く評価され受賞の対象になりました。
特に、2007年にWHO事務局長補に就任されてからは、担当分野の技術上の総責任者として途上国で猖獗を極めていた「エイズ・結核・マラリア」に悩む人々を救うために、限られた資金を効果的に使う世界戦略を立てられ、既存の戦略や指針を確実に実行するとともに、新たな戦略や指針を定めて実行されて来られました。2011年のWHOエイズ対策世界戦略、2014年の抗レトロウイルス薬総合治療指針、2014年の新結核制圧世界戦略がその一例であり、それらは、世界エイズ・結核・マラリア対策基金や二国間援助の資金により途上国で実施され、三大感染症の罹患率・死亡率の減少に大きく寄与しています。
贈呈式は、本財団中谷林太郎理事長がご欠席のため、理事長に代わり河合忠副理事長の開会の挨拶で始まり、続いて同副理事長より小島三郎記念文化賞の選考経過が報告されました。
今回推薦された小島三郎記念文化賞候補の業績は8件で、何れも極めてレベルの高いものであり、厳正審査の結果、中谷比呂樹氏を受賞者に決定した旨の選考経過報告があり、同氏に賞状と記念トロフィー、副賞が贈呈されました。
また、中谷比呂樹氏を推薦された国立感染症研究所所長の渡邉治雄氏より推薦のお言葉をいただき、同氏の業績を紹介していただきました。
研究助成金は13名の先生方に贈呈されました。研究助成金の選考経過については、選考委員長である本財団宮地勇人理事より「本年度は、申請応募件数153件に対する選考委員会での審査・選考について、厳正審査の結果、特に優れた13名に研究助成金を贈呈することに決定した。また、第11回から第20回までの研究業績集が完成したところである。」旨の報告があり、河合副理事長より受贈者に研究助成金総額1,200万円が贈呈されました。
小島三郎記念文化賞受賞者
小島三郎記念文化賞を受賞された中谷比呂樹氏は「本日は、河合忠副理事長、ご推薦いただいた渡邉治雄先生、ご列席の皆様、特に私の恩師と考えております佐々木正五先生、厚生省の先輩である北川定謙先生に厚く御礼申し上げる。この度の受賞は、私が国内外でライフワークとしてきたこの受賞テーマを、ともに仕事をして参った日本国、厚生労働省、広島県、WHOの同士の皆とともに喜びを分かち合いたいと思っている。そのためいただく副賞は、WHOへ財団より寄付としていただき有効に使わせていただきたいと考えている。1950年から1965年の15年間に子供の感染症の制圧、青年の結核対策などの公衆衛生の成果によって、日本人の平均余命は、11年伸びている。日本は、国民皆保険という世界医療文化遺産的なシステムが作られ、世界の健康、長寿大国として更に現在の日本の繁栄の源になっていった。しかし、世界を見渡すと私が国際保健の仕事を始めた当時、世界の総人口が50億人、その7割が低所得国に住み、貧困と不健康の悪循環に苦しんでいた。その連鎖を断ち切るため、21世紀に入り大量のODA(政府開発援助)が私の担当するエイズ、結核、マラリア分野に投下され、三大感染症も漸く減少を見るようになった。
しかし、感染拡大が続く"エボラ出血熱"は、西アフリカの最も貧しい国々で猛威をふるっており、"不健康と貧困を忘れるな"という強い警告と受け止めている。世界で進行する少子高齢化問題については、日本の経験と技術を広く世界に共有し、また世界から学ぶという事が日本の積極的平和主義のモデルケースとして極めて重要である。今回の受賞を機に残された課題についてますます精進し、日本の人材養成にも協力したい。」と感謝の言葉と今後の抱負を述べられました。
研究助成金を受けられた先生方
また、小山記念病院甲状腺科部長の軸薗智雄氏より「本日、研究助成金受贈者を代表して一言お礼の言葉を述べさせていただきたい。我々が研究した甲状腺癌の中で濾胞癌は術後の病理検査により診断するが実際には悪性度を評価するのが困難な症例群であるため、今後は細胞診検体でのマイクロRNA解析による診断を考えている。この時期に研究助成金をいただけた事を大変光栄に思っている。この気持ちを忘れずに臨床検査・衛生検査の研究に従事して参りたい。」と受賞の喜びと今後の抱負を述べられました。
最後に本財団黒住忠夫常務理事より閉会の挨拶があり「中谷比呂樹氏には心よりお慶び申し上げる。研究助成金受贈者にはこの研究助成金を有効に使っていただき先生方の研究がさらに進展されることを期待している。」と述べられました。
引続き、受賞の先生方を囲んでの祝賀会に移り、本財団の豊島久真男理事のお祝いの言葉と乾杯で始まり、盛会のうちに散会となりました。
(事務局 佐藤 貴司)