小島三郎記念文化賞・研究助成金
2015年度
第51回小島三郎記念文化賞並びに第23回研究助成金の贈呈式が平成27年10月30日(金)午前11時より、銀行倶楽部(東京・丸の内)において開催されました。
小島三郎記念文化賞の受賞者は、北海道大学大学院医学研究科免疫学分野教授の瀬谷司氏。
受賞のテーマは「自然免疫の自己・非自己識別機構に関する研究」で永年、自然免疫、特に補体の研究に携わり、生体の微生物認識機構とそれが誘起する免疫活性化を分子レベルで解析され、補体からToll-like receptor(TLR)にわたる非自己識別機構の解明に尽力されました。特に自然免疫にも自己・非自己の識別機構があると仮定して自己補体の攻撃を阻害する「膜型補体制御因子CD46」を世界に先駆けて同定され、その補体阻害機構を明らかにされました。さらに、免疫機能を高める作用を持つ物質であるアジュバントを開発されました。アジュバントは古くから、ワクチンや癌、免疫増強などに使用され毒性の問題がありましたが、瀬谷博士のグループはサイトカイン毒性のない免疫アジュバントとしてTLR3だけを選択的に活性化する合成RNA核酸誘導体(ARNAX)を開発されています。自然免疫という大きなテーマのもとで高いレベルの研究が行われ、今日の最先端のがん免疫療法に多大の貢献をされた業績が高く評価され受賞の対象になりました。
贈呈式は、本財団河合忠理事長の開会の挨拶で始まり、続いて文化賞選考委員長である豊島久真男理事より小島三郎記念文化賞の選考経過が報告されました。
今回推薦された小島三郎記念文化賞候補の業績は、本賞の目的とする小島三郎先生の研究領域の範疇外の2件を除く4件が選考の対象となり、何れも極めてレベルの高いものであり、厳正審査の結果、瀬谷司氏を受賞者に決定した旨の選考経過報告があり、同氏に賞状と記念トロフィー、副賞が贈呈されました。
また、瀬谷司氏を推薦された北海道大学大学院医学研究科研究科長の笠原正典氏が所用で欠席のため、代理として同科副研究科長の渥美達也氏より推薦のお言葉をいただき、同氏の業績を紹介していただきました。
研究助成金は14名の先生方に贈呈されました。研究助成金の選考経過については、選考委員長である本財団宮地勇人理事より、申請応募件数191件(前年度153件)に対する選考委員会での審査・選考について、厳正審査の結果、特に優れた14名に研究助成金を贈呈することに決定し、本年度の助成は100万円増額した旨の報告があり、河合理事長より受贈者に研究助成金総額1,300万円が贈呈されました。
小島三郎記念文化賞受賞者
小島三郎記念文化賞を受賞された瀬谷司氏より「本日は、伝統・歴史ある小島三郎記念文化賞にご推挙いただき、また推薦に携わってくださった黒住財団の方々、選考委員の方々に心から感謝申し上げる。小島三郎先生は、長い間保健衛生、特に予防医学の領域で質の高いお仕事をされ、ご自分は表に出ず人をうまく支えながら育てるような方と伺っている。私も、次の世代の方が育つように人々の健康のために少しでもお役に立てればと思っている。大阪府立成人病センターに赴任以来、永年ワクチンのアジュバント開発を続けてきて、それが癌に苦しむ人、また治らない病気、難治性感染症を患っている方々にできるだけ副作用の少ないものを開発しようと20年程自分の許す範囲で精一杯研究を継続してきた。これが実を結ぶことがあるかどうかまだ分からないが、次世代の健康に少しでも役立ち、社会に尽くせることがあれば大変栄誉なことであると思っている。」と感謝の言葉と今後の抱負を述べられました。
研究助成金を受けられた先生方
また、東北大学病院診療技術部検査部門副臨床検査技師長の豊川真弘氏より「本日、研究助成金受贈者を代表してお礼の言葉を述べさせていただきたい。私はこれまで臨床検査技師として微生物検査を中心に臨床の現場と研究に携わってきた。ここ十数年における臨床検査の発展は凄まじいものがあり、微生物検査領域も同様で、遺伝子解析技術や質量分析技術の導入により従来検出できなかった微生物も容易に検出・同定が可能となった。このように有用な技術を駆使し臨床に役立つデータベースの構築を目標とし研究を進めている。我々受贈者一同、非常に厳しい審査・選考のうえ選ばれたという事は、心から喜ばしく、また誇らしい気持ちであるが同時に今後の研究遂行に対し身の引き締まる思いである。研究にいっそう精進し、社会に貢献していきたい。」と受賞の喜びと今後の抱負を述べられました。
最後に本財団黒住忠夫常務理事より閉会の挨拶があり「瀬谷司氏には心よりお慶び申し上げ、研究助成金受贈者の方々にはこの研究助成金を有効に使っていただき先生方の研究がさらに進展されることを期待している。」と述べられました。
引続き、受賞の先生方を囲んでの祝賀会に移り、本財団の渡邉治雄副理事長のお祝いの言葉と乾杯で始まり、盛会のうちに散会となりました。
(事務局 佐藤 貴司)