小島三郎記念文化賞・研究助成金
2016年度
第52回小島三郎記念文化賞並びに第24回研究助成金の贈呈式が平成28年10月28日(金)午前11時より、銀行倶楽部(東京・丸の内)において開催されました。
小島三郎記念文化賞の受賞者は、九州大学生体防御医学研究所感染ネットワーク研究センター免疫制御学分野教授の山ア晶氏。受賞のテーマは「結核菌受容体群の発見と宿主免疫賦活化機構の解明」で、山ア晶教授のグループは、結核菌由来の強力なアジュバント糖脂質である Trehalose dymicolate(TDM)の受容体がレクチン受容体Mincleであることを同定し、また、Mincleに類似したレクチン受容体MCLも結核菌受容体として宿主免疫活性化に重要な働きを担うことを発見しました。さらにMincleおよびMCLとゲノム上で隣接して存在するDectin-2が結核菌特有の種々のリポ多糖を直接認識する活性化受容体であることを見出しました。結核菌の免疫賦活能のメカニズム解明は、これまで不明な点が多いまま接種されていたBCGワクチンの主な作用機序を説明できるもので、60年以上の謎を解明し、結核菌受容体の発見とともにその関連領域において顕著な学問的業績で我が国の文化に大きく貢献した研究成果であり、これらの業績が高く評価され受賞の対象になりました。
贈呈式は、本財団河合忠理事長の開会の挨拶で始まり、続いて文化賞選考委員長である豊島久真男理事より小島三郎記念文化賞の選考経過が報告されました。
今回推薦された小島三郎記念文化賞候補の業績は、本賞の目的とする小島三郎先生の研究領域の範疇外の2件を除く7件が選考の対象となり、何れも極めてレベルの高いものであり、厳正審査の結果、山ア晶氏を受賞者に決定した旨の選考経過報告があり、同氏に賞状と記念トロフィー、副賞が贈呈されました。
また、山ア晶氏を推薦された九州大学生体防御医学研究所所長の中別府雄作氏が所用で欠席のため、代理として同所副所長の佐々木裕之氏より推薦のお言葉をいただき、同氏の業績を紹介していただきました。
研究助成金は14名の先生方に贈呈されました。研究助成金の選考経過については、選考委員長である本財団宮地勇人理事より、申請応募件数243件(前年度191件)に対する選考委員会での審査・選考について、厳正審査の結果、特に優れた14名に研究助成金を贈呈することに決定し、河合理事長より受贈者に研究助成金総額1,340万円が贈呈されました。
小島三郎記念文化賞受賞者
小島三郎記念文化賞を受賞された山ア晶氏より「この度は誠に名誉ある賞を賜り、選考委員の先生方並びに推薦いただきました先生方、それから黒住医学研究振興財団並びに栄研化学株式会社の皆様に厚く御礼申しあげる。私はこれまで受賞されてきた先生方とくらべ、圧倒的に経験も業績も少なく躊躇する思いであった。この賞は別に私に対する評価というよりは実際に最先端で新しい発見を一つ一つ積み重ねてきた若い研究者に対する評価であり、今後の励みになるのであれば、こんなにうれしい事はないと喜びを新たにしている。さらに感染症分野の基礎研究に邁進し、がんばって参りたいと改めて決意を新たにしている。」と感謝の言葉と今後の抱負を述べられました。
研究助成金を受けられた先生方
また、愛知県衛生研究所生物学部ウイルス研究室の安井善宏氏より「本日、研究助成金受贈者を代表してお礼の言葉を述べさせていただきたい。私は地方自治体の衛生研究所の行政検査に従事しており、助成いただいた研究は抗インフルエンザウイルス薬に耐性になる変異の検出方法を開発しようとするものである。今回、私と共に受贈されました先生方のご研究内容は、臨床現場の必要性から生まれた研究、基礎医学的な研究など多種多様な分野に及んでおり、厳しい選考過程をくぐり抜けて受贈できたということは、一同誇らしい気持ちであり、一方で今後の研究活動に対して身の引き締まる思いでもある。この受贈を糧に研究に邁進し、臨床検査・衛生検査の分野に貢献してまいりたい。」と受賞の喜びと今後の抱負を述べられました。
最後に本財団黒住忠夫常務理事より閉会の挨拶があり「山ア晶氏には心よりお慶び申し上げ、研究助成金受贈者の方々にはこの研究助成金を有効に使っていただき先生方の研究が更に進展されることを期待している。また、来年度は研究助成金贈呈が25回を向かえることでもあり、記念として助成金の総額を引き上げることも検討している。」と述べられました。
引き続き、受賞の先生方を囲んでの祝賀会に移り、本財団の渡邉治雄副理事長のお祝いの言葉と乾杯で始まり、盛会のうちに散会となりました。
(事務局 小澤 宏和) |