第58回小島三郎記念文化賞並びに
第30回研究助成金贈呈式
2022年度
「第58回小島三郎記念文化賞並びに第30回研究助成金」の贈呈式が令和4年10月28日(金)午前11時より、東京會舘(東京千代田区)において開催されました。渡邉治雄理事長の開会挨拶ではじまり、この中で本年度は財団法人創立30回目の贈呈の年であることからこれを記念して小島三郎記念文化賞の副賞増額、研究助成事業では対象領域に「感染危機管理」を新設(2年間の時限付)、特別学術記念講演をWeb配信している旨の報告がありました。なお、今回もコロナウイルス感染症の状況を鑑み、出席者は受賞者・推薦者・本財団関係者のみの縮小した式典といたしました。
小島三郎記念文化賞
小島三郎記念文化賞の受賞者は、大阪大学微生物病研究所感染機構研究部門教授 山本雅裕博士で、受賞のテーマは「病原性寄生虫と宿主免疫系の相互作用の解明」です。 博士は一貫してトキソプラズマ原虫と宿主細胞・個体との相互作用の研究を展開して来られました。特にトキソプラズマ原虫の宿主免疫系による分子機構の解明では、宿主免疫系由来の炎症性サイトカインであるIFN-γによって発現が誘導されるGTPase群のひとつであるP65GTP分解酵素(GBP)が抗トキソプラズマ免疫応答に必須であることを世界に先駆けて示しました。また、最近では抗トキソプラズマ免疫に重要なキラーT細胞の活性化に特異的に関与する新たなシグナル伝達機構を見出しました。 さらに、トキソプラズマ原虫が宿主細胞内に侵入する分子機序を解明するとともに、トキププラズマ原虫が宿主細胞内に放出する種々の因子が免疫系を巧みに制御することにより病原性に関与していることを明らかにしました。 これらの業績が高く評価され受賞の対象になりました。 なお、理事長より、今回推薦された小島三郎記念文化賞候補の業績は、何れも極めてレベルの高いものであり、厳正審査の結果、山本雅裕氏を受賞者に決定した旨の選考経過報告があり、同氏に賞状と記念トロフィー、副賞が贈呈されました。 また、山本氏を推薦された大阪大学微生物病研究所所長の岡田雅人氏より推薦のお言葉をいただき、同氏の業績を紹介していただきました。 受賞された山本雅裕氏より、「身に余る光栄だが、43歳でこの受賞は時期尚早ではないかと戸惑っており、この受賞を今後の研究への期待を込めた「激励」と受け止めている。私は良き師匠、良き上司、良きライバル、良き教室員、そして、良き家族に恵まれていたと思っており、導かれるばかりであったが、今後は現教室員である大学院生を育てたい。」と受賞の喜びと今後の抱負を述べられました。
研究助成金
研究助成金の選考経過については、選考委員長である本財団宮地勇人理事より、申請応募件数166件に対する選考委員会での審査・選考について、厳正審査の結果、特に優れた19名に決定された旨を報告した後、理事長より研究助成金が総額1800万円贈呈されました。 また、自治医科大学附属病院臨床薬理センター室長・准教授の相澤健一氏より研究助成金受贈者を代表して、「今回受贈された先生方の研究内容を拝見すると、臨床検査、臨床研究、基礎医学研究など様々な分野に及んでおり、黒住医学研究振興財団の設立主旨が強く生きていると感じている。非常に厳しい選考過程を経て選出されたことは心から喜ばしく、また誇らしい気持ちであるが、同時に、今後の研究遂行を考えると身の引き締まる思いである。今回の受贈を機に一層研究に精進し、医学の発展と人々の健康に貢献して参りたいと思う。」と受賞の喜びと今後の抱負を述べられました。
謝辞の後、山本雅裕氏による受賞テーマの「病原性寄生虫と宿主免疫系の相互作用の解明」についての受賞記念講演がありました。講演内容は前半に病原性寄生虫のトキソプラズマに対する宿主の免疫系の研究の話を、後半では、逆にトキソプラズマがどの様にしてこの宿主の免疫を制御しているのかという免疫寄生虫学的な研究の話を話され、今後もこの様な免疫学、寄生虫学を融合させた寄生虫免疫学の研究を推し進め、このトキソプラズマの病原性の本質に迫っていきたいと抱負を述べられました。
最後に本財団寺本哲也常務理事より閉会の挨拶があり「山本氏には心よりお慶び申し上げ、研究助成金受贈者の方々にはこの助成金を有効に使っていただき、先生方の研究が更に進展されることを期待している。」と述べられました。
引き続き、受賞の先生方を囲んでの祝賀会に移り、本財団の金田良雅理事のお祝いの言葉と乾杯で始まり、盛会のうちに散会となりました。
(事務局 小澤 宏和)