小島三郎記念技術賞・福見秀雄賞
2016年度
第51回小島三郎記念技術賞並びに第35回福見秀雄賞の贈呈式が、去る6月3日(金)午後2時より銀行倶楽部(東京・丸の内)において開催されました。
式典は河合忠理事長の開会の挨拶で始まり、同理事長より福見秀雄賞、河野均也選考委員長より小島三郎記念技術賞の選考経過報告がなされ、受賞された各氏に賞状、記念品(小島三郎記念技術賞:記念盾、福見秀雄賞:記念メダル)及び副賞が贈呈されました。
贈呈後、小島三郎記念技術賞受賞者を代表して田中由美子氏(東海大学医学部付属病院臨床検査技術科)が挨拶され「我々5人は、この権威ある賞を頂き、歴史に名前を刻めたことはこの上ない喜びであり、夢のようでもある。自分の専門は血液検査であり、長年、症例と標本の管理を行い、その結果血液細胞形態アトラス3巻を出版することができ、その後の血液形態検査の教育および精度管理に貢献できた。また、自施設の骨髄移植チームと協力し、血液検査法の新たな測定法の開発・実用化により、新規移植法の確立につながった。我々受賞者は、今回の受賞を糧に、より一層、自己研鑽に努め、臨床検査の発展と人材育成に努力していきたい。」と受賞の喜びとこれからの抱負を述べられました。また、福見秀雄賞受賞者を代表して挨拶された野本剛史氏(前日本医科大学千葉北総病院中央検査部 技師長)は「臨床検査技師にとり、誠に名誉ある賞を受賞して、身に余る光栄と感謝の気持ちでいっぱいであり、受賞者5人を代表して一言お礼を述べさせていただきたい。この受賞にあたっては、長年に亘り、恩師や上司、そして先輩・同僚・後輩、さらには学会における学術・組織活動を通して多くの皆様にご支援をいただいた賜物と理解している。今後も、受賞者一同、本日の栄誉に決して甘んじることなく、この栄誉を大きな励みの一つとして、微力ではあるが更なる邁進を心がけたい。」と受賞の喜びと今後への決意を述べられました。
特別講演として横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学 教授の谷口英樹先生による「ヒト臓器の創出を目指す戦略的iPS細胞研究」と題した講演がありました。先生は元々移植外科医であり、iPS細胞から世界で初めて肝臓の芽(臓器)をつくった方です。
今回のご講演は、今までの再生医療の概念とは違い、移植外科医の視点よりiPS細胞からつくった臓器の芽、つまり器官の原基を移植することによってそれを臓器に育てるのは患者自身という新しい治療概念のお話でした。ただ、この新しい治療概念の提唱は、当初国内ではほとんど受け入れられず、欧米では高い評価を受けていた状況でありました。現在では実用化研究のプログラムに入ることができ、近々臨床研究に入ることが可能となってきました。また、肝臓以外にも腸管、肺、腎臓、心臓、膵臓などもこの方法で臓器をつくることができそうであり、特に腎臓は将来的にこの方法でつくっていくことが可能であると考えているとのことです。今後、京都大学から運んだiPS細胞を横浜市立大学で臓器に変換し、他の拠点へ供給するための研究拠点として、マネジメントしていく方針で研究を進めていきたいと最新情報を交えた大変興味深いお話をしていただきました。
贈呈式の閉会にあたり、黒住忠夫財団常務理事より受賞者並びにご家族の方々へのお祝いのことばが述べられ「受賞された先生方の平素のご努力が高く評価されて本日の受賞になった訳で、この受賞を契機にさらに研究活動が発展され医療に貢献されることを祈念している。」と挨拶がありました。
贈呈式の後、受賞された先生方を囲んで、一般社団法人日本臨床衛生検査技師会の長沢光章副会長から受賞者へのお祝いと激励のことばをいただき、同氏による乾杯の音頭で祝賀会に移り、一般社団法人日本臨床衛生検査技師会下杉彰男元会長の中締めの挨拶で和やかなうちに散会となりました。
(事務局 小澤 宏和)